「ぬるめの半身浴がカラダにいいのよね」と一般的によく聞きますが,なぜ「ぬるめの半身浴」なのか意外に理由が書いてなかったり,よくわからなかったりします。
ここでは,特にお風呂に入ったときに生じる生理反応から考えます。
温熱,水圧という二つの物理エネルギー特性をキーワードとして,見てみましょう。
いわば,お風呂の取扱説明書のようなものとお考え下さい。 |
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| ■ヒトのカラダの調節はどうするか 自律神経系から見たヒトのカラダ |
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自律神経とは,呼吸や心臓の動き,内臓の働きや血液の流れ,体温などを調節するなど,体内環境の調節の役割を担っています。
自律神経には交感神経系(こうかんしんけいけい)と副交感神経系(ふくこうかんしんけいけい)に分かれ,それぞれ正反対の働きをします。
この自律神経は,不随意(ふずいい:意志とは無関係に機能する)であり,それぞれがどのように体内を調節するかを表したのが下の図です。 |

自律神経による体内での調節イメージ |
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| ■急激な刺激はキケンがいっぱい |
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| 熱い!!という刺激 |
| ↓ |
| 温覚(温度センサ)が探知 |
| ↓ |
| 脳に伝達 |
| ↓ |
| 交感神経活動が優位になる |
| ↓ |
| 心拍数↑ 心収縮力↑ 血圧↑ |
| ↓ |
| 急激な血圧上昇の危険 |
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ヒトの平常時の体温はどのぐらいでしょうか?
一般的には「平熱=36.5℃前後」と理解されていることでしょう。
それでは,足や手などのつま先の温度はどうでしょうか?
夏期で33℃前後,冬季で31℃前後となります。
いわゆる「冷え性」と感じる方は,もっと低い体温を示すのかもしれません。
42℃前後のお風呂にいきなり10℃前後も温度差がある指先をつけるとカラダはどんな反応を示すか,ここがポイントです。
「熱い!」という刺激はカラダにとってストレスとなり,カラダは緊張します。
このストレスによって,交感神経が優位に活動するようになります。
すると,交感神経による調節により,血管は収縮し,総末梢抵抗(そうまっしょうていこう:血管の中の抵抗,これが上昇すると血圧は上昇する)は上昇し,心収縮力と心拍数が上昇することで血液が送り出される量が増加するために,血圧が急上昇します。
様々な実験の結果で,42℃前後の湯にいきなり触れると収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ:いわゆる上の血圧)は30〜40mmHg上昇するといった結果も出ています。
お風呂の中での突然死や,事故の原因となる場合があるので特に注意が必要です。 |
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| ■お風呂にはいると,まず温熱の刺激を受ける |
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お風呂にはいると温熱の刺激を受けます。
温熱刺激は,皮膚にある「温覚(おんかく)」と呼ばれるセンサーにより感知され,脳に刺激情報が伝わり,体温調節の必要性から自律神経が活動しはじめます。
このとき,体温との温度差によって,優位に活動する自律神経が変わります。
湯の温度と,自律神経の関係が下の図です。
つまり,例えば目覚めをよくしたい朝などは交感神経を刺激する高温浴の温度帯で,リラックスしたい夜などでは副交感神経を刺激する不感温浴から温浴ぐらいの温度帯で入浴すると良いと言ったことが考えられます。
お風呂の温度を考えると,自律神経の働きから,自分の狙う状況に体内を調節できるようになるのです。 |

お湯の温度帯/浴の名称/自律神経刺激 |
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| ■何分入ったらカラダはあたたまるのか |
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右のグラフは,1980年に名古屋大学医学部付属病院 理学療法部で実施された実験結果です。
詳細はこちらを参照→
40℃のお風呂に入り,ひふく筋(ふくらはぎにある大きな筋肉)の3cm内部の温度がどのぐらい上昇したのかを計測した結果,ふつうにお風呂に入った場合,10分の入浴で0.68℃(30名平均)しか,温度が上昇しないといった結果が出ています。
大音量の超音波という「深達性温熱効果(しんたつせいおんねつこうか:超音波エネルギーにより体内を直接あたためる)」が期待できないふつうのお風呂の場合,10分程度ではなかなかあたたまらないことがわかります。
つまり,いくら水の熱伝導がよいといっても,皮膚の表面から伝えていくだけではなかなか体内はあたためられないと考えられます。 |
3種温浴比較(ヒトひふく筋皮下3cm温度変化:実測値)

参考文献 伊藤不二夫 吉田和昭:「水治療法における超音波の効果」,日本災害医学会会誌第28巻第9号,1980 |
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| ■カラダは意外に締め付けられている 水圧の影響 |
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水深が深いところは大きな圧力であり,浴槽底から水面に向かって徐々に水圧0に向かって段階的に締め付けてくれる水圧は,静脈還流を増やし,体液8血液やリンパ液など)の循環を促進してくれる良い働きがあります。
ここで,一般的に肩までつかって入浴するとどのぐらいカラダを締め付けるかを見てみましょう。
締め付け度を定量化するために,各部位の周囲計を比較します。
| 部位 |
締め付けによって減少した周囲計 |
| 大腿部(ふともも) |
約1.5cm |
| 胸部(むね) |
約2.0〜3.0cm |
| 腹部(おなか) |
約3.0〜5.5cm |
特に腹部(おなか)の周囲計の減少が大きくなります。
胸部(むね)とは異なり,腹部(おなか)は胸郭(きょうかく:肋骨(ろっこつ)などの骨)によって守られることはなく,ふくらんだりへこんだりがしやすいようになっています。
そのため,水圧によって締め付けられる影響を特に大きく受けやすくなっています。
腹部が圧迫されると,腹腔内(おなかのなか)の圧力も増し,心臓に対する圧力や,肺に対する圧力も増加します。
静脈は,心臓側の静脈圧が,末梢(手足)の静脈圧より低い圧力勾配(あつりょくこうばい:圧力が高い方から低い方へ移動することを坂にたとえる)によって,心臓に戻ってきます。
腹腔内圧が高くなると,圧力勾配が逆転し,静脈が戻りにくくなる可能性もあります。
また,呼吸に関する実験で,肩までつかった状態で呼吸をすると,水につかった状態ではないときに比べ,呼吸にかかる仕事量が60%増増加しなければ,同じ呼吸動作ができないこともわかっています。
水圧が心臓,肺に負担を掛けるというのはこういったことから言われています。 |
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